塗料用防虫剤とは
塗料に配合され、虫を“寄せ付けず”、触れた虫を“無力化”し、建物の美観と衛生を守るための添加剤です。以下のような条件が重なると、防虫剤入り塗料の採用率が高まります。
① 昆虫の飛来・接触が多い→ 夜間照明、湿地帯、農村部、森林周辺
② 塗膜表面に虫が付着しやすい→ 高光沢塗膜、白色塗膜、夜間照明の反射
③ 木材など、虫害を受けやすい基材→ シロアリ・キクイムシ対策
④ 美観維持が重要→ ホテル、商業施設、住宅外壁 ⑤ 衛生管理が必要→ 食品工場、倉庫、農業施設
塗料用防虫剤の機能
塗料に配合される防虫剤の機能だけを端的にまとめると、忌避、接触殺虫、侵入防止、美観維持の4点に集約されます。
- 忌避(寄せ付けない)
虫が塗膜に近づくのを防ぎます。天然油系防虫剤(シトロネラ、ミント、クローブなど)が多く、外壁の虫付着防止に有効です。
- 接触殺虫(触れたら効く)
虫が塗膜に触れた際に神経系に作用して死滅させます。ピレスロイド系などの合成殺虫成分が中心で、倉庫・農業施設・木部保護でよく使われます。
- 侵入防止(侵入経路での忌避・殺虫)
建築基礎周りや隙間に塗ることで、接触殺虫+忌避の複合効果によりムカデ・アリ・クモなどの侵入を抑制します。
- 美観維持(虫の付着・巣作りを抑える)
外壁や軒天でのクモの巣、蛾の付着、虫の死骸汚れを減らします。殺虫よりも「寄せ付けない」効果が重要となります。
防虫剤が対象とする「虫」には昆虫以外に、クモ類、ダニ類(チリダニ、ツメダニなど)、多足類(ムカデ、ヤスデ)、ナメクジ・カタツムリ、サソリ(海外)なども対象になります。 クモは昆虫よりも薬剤耐性が高く、ピレスロイド系の高濃度配合が必要、ダニは体表の脂質層が厚く、油溶性殺虫成分の方が効きやすい、ムカデは嗅覚が鋭く、揮散性の高い忌避剤が効果を発揮しやすい等、種類によって防虫剤の種類を選択したり、用途により複数種類の防虫剤を配合したりする必要があります。
塗料用防虫剤の種類
塗料用添加剤として使われる防虫剤には、表1に示すように合成系(ピレスロイドなど)と天然系(植物油ベース)を中心に、接触型殺虫・忌避型の両タイプがあります。
表1 塗料用添加剤として使用される防虫剤

- 合成殺虫成分タイプ(接触殺虫型)
塗膜に触れた昆虫を殺虫するタイプです。一般的に効果が強く、屋外用途でよく使われます。塗料での使用に適しているのは、実質的にはピレスロイド系だけです。ピレスロイドは構造が一つに決まった化合物ではなく、共通の骨格を持つ化合物群です。代表例として、デルタメトリンとペルメトリンの化学構造式を図1に示します。

図1 ピレスロイド系防虫剤(デルタメトリンとペルメトリン)の化学構造式
2. 天然成分タイプ(忌避型)
植物油(シトロネラ、クローブ、ミントなど)を主成分とし、虫を「殺す」より「寄せ付けない」効果が中心です。室内でも比較的安全性が高いとされています。