顔紫外線吸収剤とは
塗膜が劣化(ワレや剥離、白亜化など)する原因は光、熱、水、化学物質(酸やアルカリ、有機溶剤)など多様ですが、光、特に高エネルギーの紫外線は大きな要因です。紫外線による劣化機構としては、以下の2つがあります。
- バインダー樹脂を直接的に分解・切断。
- 二酸化チタンや酸化亜鉛などの光触媒作用を持つ顔料に作用し、顔料表面に正孔(ホール)を生成。正孔は強い酸化力を持ち、バインダー樹脂は正孔に電子を奪われて分解・切断。
紫外線吸収剤はUVA(Ultra Violet Absorber)とも呼ばれ、紫外線(UV光)を吸収して紫外線が届かなくすることで、上記のメカニズムによる下層塗膜(バインダー樹脂)の劣化を防止します。また、有機顔料も同様のメカニズムで劣化し、変色や色褪せなどの不具合を生じますが、有機顔料を含む塗膜の上にUVAを含有するクリアーコートを施すことにより、不具合を防止・軽減することができます。UVA単独では長期耐候性が不十分なことが多く、HALS(Hindered Amine Light Stabilizer:ヒンダードアミン系光安定剤)との併用が一般的です。自動車用クリアー塗料、建築外装用クリアー塗料、プラスチック用塗料などで広く使用されます。
紫外線吸収剤の種類
紫外線吸収剤には、主に図1に示すベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系があります。図1に示したのは紫外線を吸収する部分の基本的な化学構造であり、水性塗料から有機溶剤型塗料まで、極性の異なる様々な塗料系に安定に相溶させるために、側鎖に長鎖アルキル基やフェニル基、ポリオキシエチレン基など、様々な官能基が導入された品種が存在します。

図1 塗料で使用される紫外線吸収剤と光吸収機構
図2に実在するUVAの一例を示します。図1に示したベンゾトリアゾール系UVAの基本的な構造式で、R1とR2が両方とも1-メチル-1-フェニルエチル基となっています。1-メチル-1-フェニルエチル基は非常に疎水性度が高いので、芳香族系やエステル系、ケトン系の有機溶剤に比較的よく溶け、樹脂の疎水性部分に溶けやすい性質を持っています。また、1-メチル-1-フェニルエチル基という嵩高置換基が2つもあるので、樹脂マトリクス中の移動性が低く、ブリードや揮発によって塗膜から離脱しにくく、長期間、塗膜に残存することが期待できます。

図2 ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の化学構造の一例
2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4,6-bis(1-methyl-1-phenylethyl)phenol
紫外線吸収剤の作用機構と使い方
図1に示すように、図左側の基底状態から紫外光を吸収すると右側の励起状態に変化します。励起状態から基底状態へ戻るのですが、バインダー樹脂や顔料に害のないレベルの熱を出しながら戻ります。塗膜中にUVAが残存する限りこの変化を繰り返します。
UVAは、言わば盾のようなもので、盾の後ろ(下部)は守られますが、周りが全部守られる訳ではありません。このため、UVAは複層塗膜系のクリアーオーバーコートに添加するのが一般的で、下層塗膜が紫外光によって劣化するのを防止します。単層塗膜(モノコート)へのUVAの添加による効果は限定的で、この点は添加された塗膜の耐候(光)性向上に効果があるHALSとは対照的です。
ベンゾトリアゾール系UVAは透明性が高く、クリアーコートに多用されますが、紫外光域から可視光域に吸収端が伸びているので、添加量が多いと塗膜が黄色味を帯びることがあります。このため、白色系塗料への使用には注意が必要です。ベンゾフェノン系UVAは古典的で安価ですが、黄変しやすい場合があります。トリアジン系UVAは高耐候・高安定性で近年主流になっています。
UVAの添加量は塗膜固形分に対して0.5~5%程度ですが、バインダー樹脂との相溶性が悪いと塗膜外へブリードしたり、下層塗膜へマイグレートしたりして効果が無くなるので、適切な品種のUVAを選択することが重要です。
UVA及び光安定剤の詳細については、他の総説1)を参照してください。
文献
1)川島健作、J. Jpn. Soc. Colour Mater. (色材)、67, 379 (1994)