ワキとは
塗工(塗装や印刷)膜表面に小さな穴(ピンホール)や突起、クレーターが生じる不良現象のことです。基材の汚染や油分による濡れ不良でも、小さな穴やクレーターは生じますが、これはハジキやヘコミと呼んで区別します。
塗工膜の乾燥中に、局部的な厚膜部分で生じ、塗工膜内部の溶剤が抜けきらないうちに、塗工膜表面の乾燥が進んで粘度が高くなり、閉じ込められた溶剤がガス状になって塗工膜表面を突き破った跡が残る現象です。また、塗工膜に残留した泡や塗膜硬化過程で発生したガスが、塗工膜表面を突き破った跡もワキと呼ばれます。この他、基材にピンホールや空洞が存在していたり、下塗りの焼き付け乾燥が不足して溶剤が残留していたりしても、塗工時に閉じ込められた空気や残留した溶剤によってワキが生じることがあります。塗工液に含まれる溶剤の蒸発速度が速すぎたり、塗工膜の膜厚が厚すぎたりするとワキが生じやすくなります。
ワキ防止剤の構造と作用メカニズム
ワキ防止剤もレベリング剤や消泡剤と同様に表面調整剤の一種で、低極性部と塗工液相溶部から構成されており、塗工前には塗工液に均一に混じっていますが、塗工後には低極性の空気に引かれて塗工膜表面に配向します。低極性部は他の表面調整剤と同様に、シリコーン系と非シリコーン(炭化水素)系のものがあります。構造についての詳細は表面調整剤の記事を参照してください。
ワキ防止剤も他の表面調整剤と同様に、主に塗工液(塗料やインク)の表面張力を制御することで作用します。具体的には、
- 表面張力差の抑制:塗工液中の溶剤蒸発や樹脂硬化で局所的な表面張力差が生じると、塗工膜が均一に広がらず厚膜部でワキが発生します。ワキ防止剤はこの差を緩和します。
- 濡れ性改善:下地表面の油分や汚染による濡れ不良を改善し、塗工膜が均一に広がって膜厚が均等になるようにします。
- 泡の除去:塗工膜硬化前に泡を消すことで、ピンホールやワキの発生を防ぐ。
なお、ワキを防止するには、ワキ防止剤の処方の他にも、塗装環境の整備(温湿度のコントロール)、セッティング時間の延長、塗料粘度の調整、適切なシンナーの選択、乾燥温度の管理なども重要です。