スリップ剤にはレベリング剤や消泡剤などの表面調整剤と同様に、低極性部と塗工液(塗料やインク)相溶部のブロックから構成される構造を持つもの(表面調整剤の記事参照)と、ワックス系のものがあります。 どちらも塗工膜(塗膜や印刷面)表面の摩擦を低下させて、摺動性(スリップ性)の付与、傷やブロッキングの防止、剥離性の改善をします。
表面調整剤構造のスリップ剤
低極性部(表面調整剤の記事参照)が低極性の空気に引かれて塗工膜の表面に配向することで、塗工膜最表面を低極性官能基が覆い、スリップ性を付与します。低極性部がシリコーン系やフッ素系のものが摺動性に優れていますが、フッ素系のものはPFAS類の環境への影響に対する懸念から使用が難しくなっています。用途により、低極性部がアクリル系のものも使用されます。
過剰添加すると「はじき」や「クレーター」など表面欠陥を引き起こす可能性があります。
レベリング剤の作用機構
ワックス系スリップ剤は、炭化水素系、脂肪酸系、アミド系、エステル系、天然植物系など多様な化学構造を持ち、それぞれの極性、分子量、融点によって作用が異なります。
塗料やインクに比較的多く用いられるのは、合成炭化水素系のポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス、天然植物系のカルバナワックスなどで、塗工膜に耐擦傷性や耐摩耗性を付与します。この他、脂肪酸アミド系(すべり性付与、ブロッキング防止)や褐炭由来のモンタンワックス(耐擦傷性、耐摩耗性付与)も知られています。
多くのスリップ剤を含め、ワックス系添加剤は 微粒子(ミクロ~ナノサイズ) として塗工液中に分散しています。水性系塗工液では ワックスエマルション(乳化分散体)として存在することが多く、有機溶剤系塗工液では溶媒中に微粒子として分散しています。分散安定性を保つために界面活性剤や分散剤が併用されます。
一部の低分子量・低融点のワックスは、樹脂や溶媒にある程度溶解し、分子レベルで塗工液中に存在する場合があります。
粒子状、溶解性、いずれのワックスも低極性で、塗工膜乾燥過程で相分離し、低極性の空気に引かれて表面に移行し、摩擦係数を下げる薄層を形成します。特に非極性ワックス(パラフィン系)は塗工膜表面に析出しやすく、スリップ性や撥水性を付与します。