塗料やインクなどに配合され、塗工(塗装・印刷)前は塗工液(塗料・インク)の中に均一に混ざっている一方で、塗工されて塗膜や印刷パターンなどの薄い被膜を形成する段階で、被膜表面に集まり機能を発現します。発現する機能によって、レベリング剤、スリップ剤、ハジキ防止剤、ワキ防止剤、消泡剤などと呼ばれます。また、これらの機能を複数兼ね備えた商品も存在します。
機能と効果発現メカニズムは添加剤ごとに説明しますが、これらの添加剤は類似の分子構造を持っています。その構造の基本は図1に示すように、低極性の部分と塗工液に相溶する部分のブロックから構成されていることです。塗工後に被膜表面へ集まるメカニズムは、空気が低極性物質であり、表面調整剤分子中の低極性の部分が空気に引き寄せられるからです。泡も内包しているのは空気です。

図1 表面調整剤の基本的な構造
低極性部分の化学構造により。表面調整剤はシリコーン系と非シリコーン系に大別され、シリコーン系表面調整剤の低極性部分は、ポリオルガノシロキサン(図2)です。一方、非シリコーン系表面調整剤の低極性部分はアルキル基やフェニル基、およびこれらを側鎖に持つ(メタ)アクリル系やビニル系重合体です。

図2 ポリオルガノシロキサンの化学構造
また、アルキル基の水素原子の全部もしくは一部がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル基やポリフルオロアルキル基を低極性部分として持つフッ素系表面調整剤もありますが、近年のフッ素系化合物に対する規制から、製造も使用も難しくなっています。
これら低極性部分を構成する化学構造のもう一つ大事な性質は、表面張力が低いということです。表面張力というのは、その物質の表面積をできるだけ小さくしようとして、表面を縮めるように働く力のことで、単位はNm-1(単位長さ当たりの力)です。
この表面張力が低いという性質は非常に大事で、例えばレベリング剤では、より高表面張力の塗工液被膜上を接触角ゼロの拡張濡れとなって濡れ広がりますし、消泡剤では、より高表面張力の(引っ張る力が大きい)塗工液被膜に引っ張られて伸び広がり、最終的に破れて破泡します。
塗工液と相溶する部分の構造は、ポリエステル鎖やアクリル鎖、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド、両者のブロック重合体)などで、適用する塗工液のバインダー樹脂や溶剤に応じて適切なものを選択する必要があります。
ブロック化された低極性部分と塗工液に相溶する部分の分子内での位置関係には、図3に示すように品種によって種々の形態があります1)。表面張力低下能力は低極性部分がシリコーン・フッ素系のものが大きいと言えますが、ハジキ・ヘコミやリコート性不良等の問題が生じやすいという欠点もあります。一方、アクリル・ビニル系は表面張力低下能力が若干劣るものの、先述の問題が生じにくく、例えば塗料では上塗塗料・中塗塗料の両方で使用出来る等、利点も多くあります。

図3 表面調整剤の種々の形状1)
レベリング、スリップ性付与、ハジキ防止、ワキ防止、消泡と、発現する機能は異なっても、塗工前には塗工液に均一に混ざっている点は同じです。塗工後に塗工液から分離して空気との界面(表面)に移行するのですが、この際の分離傾向が異なります。例えば、レベリング剤が被膜表面に薄くて連続的な低表面張力層を形成するのに対し、消泡剤の場合は微細な不連続性を持つ薄膜を形成するとされています。すなわち、消泡剤の方がレベリング剤よりも、塗工液からの分離傾向が大きいと言えます。この分離傾向は、表面調整剤分子の分子量と分子の極性に依存し、分子量が大きいほど、また、極性が低いほど分離傾向が大きいとされています。
一般的に、分離傾向は、消泡剤 > スリップ剤 > ハジキ防止剤 ≒ ワキ防止剤 > レベリング剤の順に大きいとされています。
文献
1) 川西洋介、工業塗装、No.221, 17