フッ素樹脂とは?構造・特徴・高耐候性・塗料用途を解説

フッ素樹脂は、炭素-フッ素結合(C-F 結合)に由来する高い耐候性、耐熱性、耐薬品性を備えた樹脂です。塗料分野では、長期耐久性が求められる建築外装や工業用途で重要な位置を占めています。

一方で、一般に知られる PTFE のようなフッ素樹脂と、塗料用バインダーとして用いられるフッ素樹脂は必ずしも同じではありません。本稿では、塗料用フッ素樹脂の構造、特性、用途を整理して解説します。

塗料用フッ素樹脂とは

塗料用フッ素樹脂の構造式

図1 塗料用フッ素樹脂の構造式

一般に「フッ素樹脂」と聞くと、フライパンの表面に用いられる PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を思い浮かべることがあります。しかし PTFE は結晶性が高く、一般的な溶剤に溶解せず、溶融温度も高いため、塗料用バインダー樹脂として直接用いることは困難です。

塗料用バインダー樹脂として広く用いられるのは、テトラフルオロエチレン(TFE)やクロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの含フッ素モノマーを、ビニルモノマー類やアクリル樹脂で扱う(メタ)アクリルモノマー類と共重合したフッ素系アクリル樹脂です。ランダム共重合体のほか、CTFE とビニルエーテルのような交互共重合体系もあります。

また、水性塗料用途としてエマルション型、ディスパージョン型のフッ素樹脂も展開されており、PVdF とアクリル樹脂の複合エマルションも実用化されています。

近年は PFAS 規制への関心が高まっていますが、塗料用フッ素樹脂は高分子量ポリマーであり、低分子 PFAS とは性質が異なります。ただし、製造プロセスでかつて PFOA や PFOS が界面活性剤として用いられていた経緯があるため、現在では PFOA フリー、PFOS フリーの製造プロセスが重視されています。

塗料用フッ素樹脂の特徴

フッ素原子と炭素原子の C-F 結合は結合エネルギーが大きく、紫外線や熱で切断されにくい性質を持ちます。このため、フッ素樹脂は耐候性、耐熱性、耐薬品性に極めて優れた塗膜を形成します。

さらに、C-F 結合は結合距離が短く、分極度が低いため、塗膜表面に配向しやすい特徴があります。その結果、含フッ素モノマーの含有量がそれほど高くなくても、塗膜表面はフッ素成分に富み、高い耐久性能を発現します。

アクリル樹脂とフッ素樹脂の促進耐候性比較

図2 アクリル樹脂とフッ素樹脂の促進耐候性比較の例

たとえば、建築外装用途では一般的なウレタン塗料の塗り替え寿命が約10年程度とされるのに対し、フッ素樹脂塗料は20年以上の耐久性を期待できると整理されることがあります。図2は、ポリイソシアネートで架橋した2液型フッ素樹脂塗料と、一般的なアクリル樹脂塗料の促進耐候性比較の一例です。

一方で、C-F 結合の低極性により、撥水性、撥油性、摺動性に優れた塗膜が得られる反面、炭素系粒子などの低極性汚れが付着しやすい場合があります。耐汚染性を重視する場合には、親水化剤の併用や、ポリウレタン樹脂シリコーン樹脂などとの比較検討が重要です。

また、ビニルモノマーやアクリルモノマーとの共重合により、一般的な有機溶剤に溶解しやすくなります。水酸基やカルボキシル基を有するモノマーを導入した樹脂は、メラミン樹脂やポリイソシアネートを硬化剤として架橋させることもできます。

フッ素樹脂の塗料での利用形態

市販の塗料用フッ素樹脂の多くは水酸基を有しており、他のポリオール樹脂と同様に、メラミン樹脂やポリ(ブロック)イソシアネートを硬化剤とする1液加熱硬化型塗料、あるいは2液常温硬化型塗料に使用されます。

また、水性エマルションタイプは、一般的なアクリルエマルションと同様に、造膜助剤を用いる常温乾燥型塗料として使用されます。外装用途では高耐候性を活かして広く採用されており、耐汚染性を改善するために加水分解性シリケートなどの親水化剤を併用する場合もあります。

文献

1)日本ペイント(株)、「塗料の性格と機能」、p.115、日本塗料新聞社(1998)

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